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【1996アトランタ五輪代表から現在へ】松原良香独占インタビュー!

文/戸塚 啓

【「世界へ」ではなく「世界とともに」】

──言葉はどうだったのでしょう? ウルグアイに行った当初から、スペイン語は何となく分かるぐらいのレベルで?
「いえいえっ、最初は分からなかったですよ。だんだんと覚えていきました。クロアチアはイタリアに近いので、イタリア語と似ている。イタリア語とスペイン語も似ているので、クロアチア語が何となく分かったり。まあでも、基本は英語ですね。スイスなんかは外国人枠が多いので、世界中から選手が来ている。そうすると、英語が共通言語になるんです」

──外国人のなかに混じっても、臆するタイプではない?

「だから高校生のときも、ブラジル人と公園でサッカーができたのかも(笑)。100の力を持っていても、ピッチで50しか出せなければ50しか持っていないのと同じ。でも、身振り手振りでも自分の意思を伝えていけば、50が70にもなる。コミュニケーション能力は大切ですよ。サッカー選手としてだけでなく、仕事においても」

──海外でプレーしていると、自分は日本人なのだと実感しませんか? ピッチの中だけでなく、プライベートにおいても。

「感じますねえ。外国人へのコンプレックスじゃなくて、外国人に負けたくないという気持ちが、僕はすごく強いタイプだと思います」

──海外へ行くと日本人らしさ、日本人の強みも分かる。

「うん、それもあります。サッカーにおいて言えば、日本人はチームを最優先に考えることができる。この選手が右に動いたら、自分は逆に動くとか。一緒にプレーしたなかでは、アフリカ人選手は感覚的な動きが多かったですね。日本人は俊敏性があって、ボールがないところの動きはすごくいい。それに加えて器用です。あとは、もっと自分を出せればなあ、と思う」

──自己主張は苦手な民族ですね。

「器用さがある反面、不器用なところもあると感じます。たとえば守りの局面で、自陣ゴールに近いところで味方選手が抜かれたら、自分のマークを捨てても止めにいくのが普通ですよね? サッカーの本質はゴールを奪うことであり、守ることだから。そこで日本人は、自分が与えられた仕事に必要以上にこだわってしまうところがあると思う。自分のマークを捨てきれずに、結果的にカバーが遅れてしまう。それってつまりは、ボールに対する執着心で劣っていることになる」
【1996アトランタ五輪代表から現在へ】松原良香独占インタビュー!
──確かに。

「ボールはひとつしかないんだから、ゴールを奪うこと、守ることが何よりも優先される。そこから逆算して、状況判断をするべきなんですけどね」

──組織で戦う意識が、日本は強い。もちろんそれは、我々日本人の強みでもあるんですが。

「良い面と悪い面があるでしょう。僕も子どもたちの指導で良く言いますが、目的と手段をはき違えちゃいけない、と」

──現役引退後の松原さんは、サッカースクールを主宰したり、Jリーグ選手OB会の副会長務めたりと、多方面で活躍されています。

「ウチの会社でいえば、『世界へ』じゃなく、『世界とともに』なんです。世界は間違いなく近くなっている。街を歩いていても、外国の方と普通にすれ違うでしょう? そのなかで僕は、日本サッカーのレベルアップのお手伝いをしたり、サッカーの素晴らしさを伝えていったり、世界とつながる日本のサッカー文化の構築に取り組んでいます。ちょっとこちらからも聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

──どうぞ、どうぞ。

「現役Jリーガーに、引退後は何をしたいと聞いたら、どんな答えが返ってくると思いますか?」

──そうですねぇ……まあやっぱり、指導者でしょうか?

「そう。ほとんど誰もが『指導者になりたい』と言う。でも、S級ライセンスを取っても、全員がJリーグの監督になれるわけではないですよね?」

──J1、J2で40クラブですから、非常に狭き門ですよね。コーチを含めても、おそらく100人にさえ満たない。

「選手は海外へ出るようになってきましたが、監督やコーチ、フィジカルコーチ、GKコーチなどの指導者や、GM、スカウト、代理人などの肩書を持った人たちも海外で活躍するようになってほしい、と僕は思っている。それが、日本のサッカーを良くしていくと思う。先日のヨーロッパリーグ決勝はアトレティコ・マドリーとアスレティック・ビルバオの対戦でしたけど、監督はシメオネとビエルサ。リーガ・エスパニョーラ(スペイン)のクラブなのに、どちらもアルゼンチン人です。日本もそうなってほしいし、なっていかないといけない」
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