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【1996アトランタ五輪代表から現在へ】松原良香独占インタビュー!

文/戸塚 啓

現役Jリーガーや日本代表はもちろん、解説者から指導者として活躍する方々まで、日本サッカーに携わる様々な人々に迫る『SOCCER NOTE』。新連載第2回のゲストは、1996アトランタ五輪代表の松原良香さんだ。
 現役時代は日本を含めて4か国でプレーした。ウルグアイ、クロアチア、スイスである。ウルグアイでは合計3年にわたってプレーし、3つのクラブに在籍した。プロ第一歩を記したのも、日本ではなくウルグアイの名門ペニャロールだ。13年の現役生活で、実に12のクラブのユニホームに袖を通した。
 移籍をすれば監督が変わり、チームメイトも変わる。プレーする国が変われば、それまでと違う言葉、文化、生活習慣などに溶け込まなければならない。
所属クラブが増えるほどに、松原さんの経験値は高まっていった。フットボーラーとしてはもちろん、人間としても。
 海外組の先駆け的存在と言ってもいい松原さんが語る、過去、現在、未来──。


【何かを犠牲にしてでも、チャレンジするべき瞬間がある】

──ご自身が出場したアトランタ五輪を思い出すことはありますか?

「ありますよ。あれからもう、ええと……16年ですか。現役当時はあまり振り返ったりはしないものでしたが、引退して時が経つと思い出すこともありますね」

──松原さんはあのブラジル戦に途中出場し、ハンガリーとの第3戦は先発しています。

「パッと思い浮かぶのが、ブラジル戦が始まる前の景色かなあ。黄色いユニホームを着たサポーターがたくさんいて、ザガロ監督と選手が入ってきたときに、『うわっ、すごいな』と思ったものです。ナイジェリアとの第2戦の試合前には、カヌとトイレではち合わせたんですね。僕の胸ぐらいまで足があって、『うわあっ、足が長いなあ、こんな選手とやるのか』ってびっくりしました」

──カヌは197センチでしたからね。

「こうやって話していたら、またひとつ思い出しました。ハンガリーとの最終戦のまえに、監督の西野さんから『次の試合は先発で使うぞ』と言われたんです。それで、時間があるときにホテルの周りを自主的に走っていました」

──コンディションを整えるために?

「もちろんそうですし、気持ち的にもそういうことをしなきゃ、と思っていたんでしょう。僕のなかでの五輪は、それまで積み上げてきたものをすべて出し切るという位置付けの大会でした。いまの選手は『五輪は通過点』と考えるでしょうが、僕にとってはひとつの終着点でした。当時はまだ、五輪世代がどんどんフル代表に選ばれるような環境でもなかったですし」
──五輪に出場して得たもの、とは?

「世界を感じることができました。それぞれにチームの色がある。ブラジルはやっぱり技術的に優れていて、とても個性豊かなサッカーをする。ナイジェリアは身体能力が抜群に高い。ハンガリーは組織的なサッカーをする、といった感じで」
【1996アトランタ五輪代表から現在へ】松原良香独占インタビュー!
──プロとしてのキャリアは、ウルグアイからスタートしています。アトランタ五輪で世界と遭遇する以前から、そもそも広く世界へ眼を向けていたのでは、とも思いますが。

「それはあるかもしれませんね。貿易の仕事をしている叔父がいて、アルゼンチンへ移住したんです。親戚ですから帰国したらウチにも寄るわけですけど、『変わった言葉をしゃべるんだなあ』と、子どもながらに思っていました。それがスペイン語とはまだ知らなかったわけですけど、何となく聞き慣れているところはあったかもしれません」

──ははあ。

「少年時代に世界と触れ合った意味では、僕の出身地の静岡ってブラジルから出稼ぎに来る人が多いんです。そういう人たちが、休みの日には近所の公園でサッカーをやっている。見ているだけはつまらないので、自然と『一緒にやろう』って感じになっていました」

────松原さんウルグアイだけでなく、ヨーロッパでもプレーしています。当時は日本人選手の海外移籍が少なかったですから、苦労も多かったのでは?

「海外でプレーするのは簡単じゃないな、とすごく思いました。たとえば、クロアチアのクラブ(HNKリエカ)はものすごく給料が安くて、いま現在も貰っていないボーナスがあります。スイスのドレモンというクラブでは、一銭ももらわずにプレーしました」

──そんなことが……。

「でも、選手ってプレーしたいでしょう。チャレンジするときは、何かを犠牲にしなきゃいけないときがある。いまはもうヨーロッパでプレーする選手がたくさんいますけど、実際は大変なことですよ」
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