今回お話しを伺ったのはカバーヘアーグループの代表、谷本一典さん。今の美容師業界の実情や人材の育て方、コロナ禍での対応などお話しを伺った。
カバーヘアーグループは美容室経営や美容アカデミーなどの教育施設の経営を行っている。谷本氏が美容師になったきっかけは自分も癖毛だったこともあるが、過去にバンドをやっていたため自分で髪の毛を切ったり、染めたりするのが多く髪の毛をいじるのが好きだったことも関わっているという。
長時間労働や低賃金で人材の生き残りが厳しい美容師業界での課題を聞いてみると次のような答えが返ってきた。時代の変化と共に人との関わり方も変わってきている。従業員に対しても昔のような師弟関係というよりもその人、個人の意見をしっかり聞いて向き合うなど対等に関わっていくことが大切。また、レベルに合わせて上達したら承認していくことも個人を活かし、尊重することに繋がると話してくれた。給料や労働時間も他の業種と格差が大きくならないようにする。美容師だからしょうがないではなく、別業種とも対等であることを意識していく必要があると教えてくれた。
7割が女性社員である中、具体的に働きやすい環境について聞くと、時短営業の日やノー残業デーをつくったりと労働時間の整備を行っていると言う。給料面でも新入社員では一般社会人の初任給の水準を基準とし、もちろん個人の頑張りによって利益を還元できるようなシステムになっている。このような事が働きやすさに繋がっていると話す。ただ給料格差が大きくなると自分を卑下したり傲慢になる人も出てくるため、給料格差が大きくなりすぎないようにバランスをとることも経営のポイントであると谷本氏は語った。
また教育として人格形成を重視。自主性・主体性を重んじた行動をする事で人のせいにするのではなくて自分の責任において生きていくようにと教育していると言う。それにより、ものの見え方や考え方の変化に繋がり、人生が豊かになる。例えば嫌な事に対して「なんでこの事が起こったのか?」と自分の感情というフィルターを通すのではなく、俯瞰してその出来事を事実として捉えると真実が見えてくると話してくれた。
現在のコロナ禍での対応を伺うと、一番にスタッフを不安にさせないように心がけている。そして検温や除菌などお客様とスタッフへの感染症対策をしっかり行い、お客様にきてもらえるような発信や空間作りを徹底していると言う。経営に重要な経済的な部分を見ると、適材適所へのお金・人の配置をして企業の体力がある状態をつくらなければいけない。当社は今までの仕組みや教育もあったお陰で、今も安心して働ける環境があると語る。こういった状況も考慮して組織やお金含め、持ち堪えられる体力づくりが経営においても大切だと教えてくれた。
数百名のスタッフを率いている谷本氏がリーダーとして意識していることを聞くと、自分の言葉と発信する内容に気をつけていると語る。スタッフには過去は過去なので囚われるのではなく、今にフォーカスして今できることをするようにと言っている。お客様がこなかったり、給料が上がらなかったりと、自分の気分が今の状況をつくっている。原因などに気づいて変われた時に状況も変わってくるため、自分の感情と向き合う大切さを常に伝えていると話す。そのため、人格形成の教育は面談を行ったりとしっかりと取り組んでいる。例えばカラーをしているお客様が多い中、同じく失客も多い場合、なぜそうなのか?と問い、どの美容室に行っても同じと思われるような仕事を自らしてないのか、だから他に行ってしまうのではないのか、と問題点を指摘、一緒に向き合うなど、教育方針のポイントを教えてくれた。
最後に今後の目標を聞くと、バランス経営だと言う。人が増えれば店舗を増やし、独立していく人が多く人員が減るのなら店舗を減らすといった、今の人の流れや時代に合わせ、世の中に一番あった経営をしていくのが目標だと語る。
自分の感情に囚われず、正しいものの見方をして、自分の人生は自分のために生きていこうと人格形成に力を入れている谷本氏らしい背中を押す言葉を最後に残し、今回のインタビューは幕を閉じた。
情報提供元:マガジンサミット
記事名:「変化していく美容業界での働き方や教育方針、そして今のコロナ禍での実情とは」