―プロサーファーとして吉本興業に所属することになりましたが、率直な感想を教えてください。
野呂:私自身サーファーとして、海の環境のことをとても気にしているんですけど、吉本興業もSDGsなどを実践されているので、例えば、ビーチクリーン活動やノープラスチック活動などを拡げていければいいなと思っています。また私は大阪出身で、吉本興業の新喜劇を観て育ってきたので、いずれは新喜劇に出演するのも夢です(笑)。
前田:私はナンバー1のプロサーファーになりたいし、今年はオリンピックも目指しています。そんな私の活動を吉本興業が後押ししてくれるのはとても嬉しいです。また玲花(野呂)と同じく、私も吉本興業が実践している環境問題への取り組みに共感しています。私はハワイ出身なのですが、父は大阪出身なので何かルーツを感じる部分もありますね(笑)。
―“環境問題”というワードがお二人からありましたが、日常生活の中で実践されている環境活動などはありますか?
野呂:海でのサーフィンを終えた時には、サーフボードを持っていない方の手で、出来る限りのビーチクリーンをしています。また昨年からマヒナと始めたのですが、自分のストローやフォークやスプーン、エコバッグは常に持参するようにしています。
前田:私も玲花と同じです。
―環境のことについて考えるようになったきっかけを教えてください。
前田:私が育ったハワイでは、ビーチで遊んだ帰りにゴミを10個拾うというようなゲームもあったりして、コミュニティの中に自然と環境を守る的な思考がありましたね。
野呂:私はたまたまSNSでウミガメが泳いでいる画像を見たんですけど、ウミガメにゴミが絡まっていたり、小さなゴミを海の生物が食べてしまうというような情報を目にして、私に出来ることは何かな? と思うようになったのがきっかけです。
―サーフィンを始めたきっかけを教えてください。
野呂:両親がもともとサーファーで、弟も小さい頃からサーフィンをしていたのですが、私はそこまで興味が無かったんです。そんな中13歳の頃、大阪から四国に移住した時に四国のとあるプロサーファーに憧れるようになり、私はサーフィンを始めました。サーフィンを始めて1年目で女子だけの試合に出場したんですけど、1回戦目で負けてしまって。その時に火がついて、絶対に勝ちたい、プロになりたいという気持ちが大きくなりましたね。
前田:私はサーファーでもある父の影響が大きいです。小学生の頃は”バンザイ パイプライン”※の近くに住んでいて、そこには世界的に有名なプロサーファーが多く、プロサーファーになりたいという友達も多かったんです。そういったコミュニティの中で育ったので、学校が終わったら海(サーフィン)に行くといったライフスタイルでしたね。
―サーフィンを始めて良かったなと思うこと、サーフィンの魅力を教えてください。
野呂:サーフィンのおかげで世界が広がったということですかね。試合でいろいろな場所に行くので、各地で友達が出来てコミュニティが広がりました。また、サーフィンは他のスポーツに比べて、自然に左右されやすいスポーツなので、同じ波は二度と無いですし、その波に乗るというのはすごく特別な気持ちになれるので、それが魅力だと思います。あと私は小さい頃、ぼーっとした子供で、口数も少なめでしたし、すぐ喉に食べ物を詰まらせたりしていて(笑)。サーフィンを始めて、負けず嫌いな部分が出てきたり、自己主張が出来るようになりましたね。口数も多くなりました(笑)。
前田:サーフィンはすごく神秘的なスポーツだと思います。この前もハワイで試合があったのですが、ハワイには“ティ・リーフ”という葉があって。“ティ・リーフ”はハワイでは神聖な植物とされていて、試合後、神様に感謝の気持ちを込めてその葉を編んだものを海に流したりするんです。それを見て、改めてサーフィンというスポーツは神秘的なものだと感じました。また、サーフィンは自分の気持ちを表現できるスポーツだと思います。アートに例えると波がキャンバスで、そこに自分の気持ちを表現するつもりで絵を描く。そんな想いでサーフィンをしています。
―サーフィンを今後どうやって広げていきたいですか?
前田:サーフィンはまだ多くの人に知られていないスポーツだと思っています。吉本興業はコメディアンの方々が多く所属する会社なので、そのコメディアンの方々と何かの形でサーフィンを繋ぐことが出来れば、多くの人にサーフィンを知ってもらえるきっかけになるのではと期待しています。
野呂:マヒナ(前田)が言うように、まだサーフィンはマイナーなスポーツです。「サーフィン=試合」ではなくて、サーフィンの魅力や楽しさを吉本興業と一緒に伝えられればと思っています。
―お二人が実践している日々のトレーニングを教えてください。
野呂:マンツーマンのパーソナルトレーニングに週3回通っていることと、近所のトレーニングジムで、有酸素運動を取り入れたトレーニングをしています。太りやすい体質なんですけど、食べることはなかなかやめられないので(笑)。あと、憧れている選手などのサーフィン映像を観て、イメージトレーニングもしています。
前田:私は専任のコーチがいるんですけど、数人のプロサーファーとグループになって、実際の試合を想定したトレーニングをすることが多いです。メンタル面も鍛えられますね。もう1人、私の師匠でもあり父親のような方にはラウンドトレーニングを教えてもらっています。私もトレーナーライセンスを取ったのですが、”ジナスティカ・ナチュラル”というヨガと柔術をミックスしたトレーニングなんです。呼吸をコントロールするプログラムがあるんですけど、メンタル面のバランスを整えるのにも最適です。
野呂:私も”ジナスティカ・ナチュラル”を教えてもらっているんですよ。あと私は、とにかくサーフィンを怠けないなどの日々の積み重ねを自信にして、メンタル面を維持していることもありますね。
―アスリートとして、お互いをどう思っていますか?
野呂:マヒナのことは昔から知っているんですけど、すごく頑張っているのも知っているし、スランプの時も知っているし、悩んでいる時もいろいろ相談に乗ったりしていました。そんな中でも、とにかく自分を信じて突き進んで、オリンピックの候補になるなんてすごいと思います。とにかくアスリートとしてカッコイイです。私にとってサーフィンの先生であり、英語の先生でもあります。あと、私はアメリカのファッションが好きなので、ハワイ育ちのマヒナから勧められたアイテムなどにとても興味があって。ファッションの先生でもありますね(笑)。
前田:玲花は一緒にサーフィンをしていても楽しいし、サーフィン以外のことで話をしていても楽しい。絶対に人の悪口も言わないですし、人としてしっかりしていると思います。
野呂:マヒナもそうです。例えば、同じ試合に出て私が勝ち進んだ場合でも、私のことを応援してくれるし、その逆の場合でも私はマヒナを応援するし。二人の関係でネガティブなことはありませんね。
―最後に今後の目標を教えてください。
前田:WSL CT(チャンピオンシップツアー)へ出場すること。あとはもちろん、東京オリンピックですね!
野呂:6年間、WQS(ワールド・クオリファイ・シリーズ)に出場していたんですけど、今はJPSAという日本国内の試合をメインとしています。そこでチャンピオンになることが目標です。
※ハワイのオアフ島、ノースショアのエフカイ・ビーチパークにあるサーフスポット。世界最大級の巨大な波を作り出すポイントの1つとして、サーフィンの聖地と呼ばれることも。
◆プロフィール
前田マヒナ
1998年日本人の両親のもと、ハワイ・オアフ島で生まれる。 4歳からサーフィンを始め、2013年にISA(国際サーフィン 連盟)WSL(世界プロサーフィン連盟)のジュニアタイトルをダブルで獲得。2018年WSLQS世界ランキング14位にランキング。日本代表に選出。2019年ランキング15位。2020年は14位。2020年JAPAN OPEN優勝。東京五輪出場を目指す。
~戦歴~
2020年 第2回JAPAN OPEN 優勝
2020 Women’s WQS 14th
日本サーフィン連盟日本代表
2019 日本サーフィン連盟日本代表
Women‘s WQS Rank 15th
2018 Women‘s WQS Rank 14th
野呂玲花
中学1年生の時にサーフィンを始め、中学3年生の時に全日本 サーフィン選手権優勝。高校1年生でプロ転校。初めてのプロトライアル参戦「JPSA 千葉鴨川」で優勝。
~戦歴~
2019年JPSAショートボード年間ランキング7位
2018年JPSAショートボード年間ランキング2位
JPSA千葉一宮優勝
2017年WQS 1,000 Cape Town 南アフリカ4位
WQS 1,000 Durban 南アフリカ3位
2016年WQS 1,000 Ichinomiya Pro 千葉志田下優勝
WQS 1,000 Board Masters イギリス3位
WQS 1,500 Anglet Pro フランス5位
WQS 1,000 Médoc Océan Lacanau Pro フランス5位
◆Instagram
前田マヒナ https://www.instagram.com/mahinamaeda/
野呂玲花 https://www.instagram.com/reikanoro/
情報提供元:WWSチャンネル
記事名:「【インタビュー】吉本興業に所属が決まったプロサーファー前田マヒナと野呂玲花がサーフィンの魅力について語る」