INTRODUCTION
骨ノ髄マデ凍ル様ナ晩 森ノ奥ニ 見テシマッタ・・・木槌(きづち)ヲ 振ウ 白イ影ヲ・・・この夜を生き残れたら―もう、怖いものはない。 デビュー作である殺人ビデオ・ゴアスリラー『MACTO』でいきなり第三回ひろしま学生キネマ祭グランプリ。セルフプロデュース/監督・脚本を手がけたゾンビ映画『葬儀人 アンダーテイカー』で世界5大映画祭に招待上映、ハリウッドの「マーヴェリック・ムーヴィー・アワード」で作品賞、監督賞含む5部門ノミネート。 相原コージ原作の短編ゾンビ作品『Z 世界最後の夏』でジャパン・フィルム・フェスト・ハンブルグ招待上映。Jホラー次代のリーダー、川松尚良監督が叩き付ける全く新しい戦慄̶! 日本映画界が口を閉ざした「丑の刻参り」とは?それは、日本古来より伝わる呪詛(じゅそ)。 丑の刻(深夜1〜3時)、憎い相手を象った人形を神社のご神木に打ち付けることで行う。もし行為を目撃された場合—目撃者を殺してしまわなければならない。 |
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全編を覆う、息つく間もない疾走感。追われる。どこまでも。いつまでも。 太古より日本社会の底流に存在しながら、今までホラー映画のテーマとして扱われたことがない実在の呪い、「丑の刻参り」。これまで日本映画が「丑の刻参り」を封印して来た理由は二つある。 今も残る風習であり、誰にでも簡単に行える危険性があること。呪うものと呪われるものの間に距離がある分、その恐怖を描くのが難しいこと。デビュー以来一貫して恐怖を志向して来た川松監督は、果たしてどのような手法でこの禁忌に挑んだのか? 「観ただけで追われる」—不条理ホラーとしてはこの上なく強力なこの一点に着目した監督は、実に上映時間の7割がチェイス・シーンという本作の構造を練り上げていった。物語は「丑刻の呪い」の奥深くまで踏み込み、主人公の日常が一気に浸食されていく様を、観客が呼吸を忘れるほどの緊張感で描き出していく。 そしてそのラスト―いわれのない追撃と思われたものが、ケンジ、そして我々観客が目を背け続けたものに帰結し、収束していく―その圧倒的なまでの展開、心してご覧頂きたい。 |
STORY
あの晩、僕は逃げていた。彼女から、家族から、友人から、夢から。そして、自分自身からも。 ある真冬の夜、脚本家を目指す青年・健二が自転車で通りがかった人気のない林道。絡まり合う木立の向こうに、彼は見てしまう。狂おしい憎しみを込め、五寸釘を人形に打ち込む白い女を。 一旦はその場を逃げ出したものの、健二はふと思う。「あの恐怖を、もっと深くまで知って脚本にしたら—もしかして、誰も書いたことがないものが書けるかも知れない」一旦はその場を逃げ出したものの、健二はふと思う。「あの恐怖を、もっと深くまで知って脚本にしたら—もしかして、誰も書いたことがないものが書けるかも知れない」 林道に舞い戻った健二は、静まり返った森の中へと入り込んでいく。その奥に待つのは、かつて誰かが打ち付けた無数の人形と、青白く、一際多くの人形をまるで奇妙な果実のようにぶら下げた大木だった。 そして、森の奥から聴こえて来たのは、おぞましい息づかいと枯れ葉を踏みしめる足音・・・!健二の眠れない夜が始まった。オレンジ灯が照らす国道、山を貫くトンネル、神社脇の交番—言葉もなく、女は一心不乱に健二に追いすがる。通りかかった車の運転手も、警察官たちも、友人たちすら健二を助けようとしない。 それどころか、まるで女の操り人形にでもなったかのように、奇妙な姿勢で健二を追い始めたのだ。そして・・・遂に健二の部屋の住所が女に知られてしまう。今、部屋には恋人の美穂がいるのだ。心を病み、健二の帰りを待つ美穂が。やがて健二が知る、女の抱いた憎しみの回復しようもない大きさ、誰もが目を逸らし続けるこの街の過去―! 間もなく朝陽が昇る。 健二と人形たちの「鬼ごっこ」は、絶望的な終局を迎えようとしていた。 |
PRODUCTION NOTE
■呪いの古人形群、謎の木槌、不気味な仮面。本物にこだわった異様な小道具たち! 『葬儀人 アンダーテイカー』では自ら美術を手がけ、ハリウッドの映画祭で美術賞を受賞した川松監督は今回も自ら美術品を制作。廃墟の奥深くに眠っていた謎の古人形群を貰い受け、それを生木に打ち付けるなど鬼気迫る熱量で本作のヴィジュアルを創り上げた。また、丑刻の女の武器ともなる異様な形状の木槌は、さる豪農の倉に江戸時代中期より保管されていたもの。その本来の用途は今となっては不明だという。「本物」の歴史を湛えた小道具たちが誘う「本物のJホラー」である本作は、またも世界の映画祭を騒がせること必至だ。 ■風光明媚な歴史の街、神奈川県藤沢市で行われた撮影 本作はその90%が川松監督の故郷、神奈川県藤沢市での撮影となる。脚本上ほぼ全編が夜シーンであり、実際の夜間撮影に拘った川松監督の指示のもと、撮影は連日午後〜翌日の朝までという強行軍となった。まるで魔物の胎内にいるような錯覚を覚える丑刻の森シーン、人っ子一人歩いていない広大な国道をひたすら逃げていく圧倒的な絶望感などはそうして造り上げられていった。 監督自らの地元であるという地の利を生かし、ロケーションはほぼ全てロケ初使用の場所を使用。主人公が働く巨大リサイクルショップ、ぬめぬめした地下水が車道を濡らす大型トンネルなど、目を見張る様な新鮮な恐怖ビジュアルが展開していく。 ■宣伝ビジュアル写真には写真家、ハヤシアキヒロ氏が参加! モデル、女優、芸人―これまで一万人以上の「人」を撮り続けて来た写真家ハヤシアキヒロ氏が脚本に惚れ込み、宣伝ビジュアル、ポスターアートなど総合的に本作の写真を撮影!川松監督の情緒溢れる恐怖世界観との相性も抜群で、日本ホラー映画としては初の映画×写真のコラボ写真展までも開催する運びとなった。 写真展ではケンジ=美穂の心情を別の視点から写し取った作品、丑刻の女性の哀しき日常を垣間見ることが出来る作品など、劇中で描かれなかった本作の深みを更に知ることが出来るハヤシアキヒロ作品を展示。また、写真展の会場には本作らしい「恐怖を肌で体験」できる仕掛けも施される。会期中はハヤシ氏、川松監督を始め、キャストの面々も来場し、映画の魅力を伝えてくれる。写真展の詳細は本作の公式twitterアカウント/公式ホームページにて発表予定! ■全編を彩る音楽は『着信アリ』の松田純一氏! Jホラー屈指の傑作としてハリウッドリメイクもなされた『着信アリ』。そのテーマ曲とも言える「死の着信メロディ」を作曲した松田純一氏による本作の音楽。圧倒的不安感を誘う恐怖曲を聴かせる一方、健二の生きる日常を彩る哀切かつ美しい旋律も聴き所。単なる恐怖映画ではなく、この絶望的な世界を覆う哀しみに対するレクイエムとでも言うべき本作のメッセージ性を見事に浮き上がらせている。オリジナルサウンドトラックも発売予定! |
CAST & STAFF
『丑刻ニ参ル』 |