INTRODUCTION
日本映画史に、 2017年、処女小説で文學界新人賞を受賞したばかりの若き作家が芥川賞を受賞、センセーションを巻き起こす。 その小説は自らが住む盛岡を舞台とし、見知らぬ土地でただ一人心を許した友との出会いと別れを描き、 いなくなった友の本当の姿を探しながら、主人公自身が喪失と向き合い再生していく物語。 一方で、新たな風を日本映画界に送り続け、時代ごとのエンタテインメントを牽引してきた映画監督がこの小説と出会い、 自身の故郷・盛岡を舞台にした物語に心を奪われ、すぐに映画化に動く。 そして2018年、監督が熱望した二人の俳優が盛岡に集う。 こうして映画『影裏』は生まれた― 大友監督の新たなる挑戦にして、 NHK大河ドラマ「龍馬伝」、『ハゲタカ』、『るろうに剣心』シリーズ、『3月のライオン』と、日本のテレビ・映画界に新たな挑戦をし続けている稀代の映画監督・大友啓史。大友が惚れ込んだ原作は、沼田真佑氏の処女小説にして文學界新人賞、そして第157回芥川賞受賞作である「影裏」(文春文庫刊)。ハードボイルドのような力強さを持ちながらも、五感に訴えかけてくる描写がとても美しいその小説の舞台・盛岡は、大友の生まれ育った土地でもあった。失踪した親友の真実の行方、そこに浮かび上がる彼の影と、その裏…。美しい自然の中で進行していく物語は、静かながら青い炎を秘めている。出会ってすぐに大友自ら映画化の準備をはじめ、情熱と思いを紡ぎ完成させた本作は、彼の最新作にして、最高傑作との呼び声が高く、大友自身も本作へ熱いコメントを寄せている。「タイトル通り、この映画は誰もが持つ影の部分、裏の部分に踏み込んでいく作品です。本音では言えないところに、人それぞれの真実、社会との葛藤が潜んでいる。その“影裏”を、深く刻み込むかのように体現してくれる役者たちが揃いました。役者たちの見事なアンサンブルと共に、自分の魂を作品の奥底に深くしのばせたつもりです。大人の皆様に楽しんでいただける作品になったと思います」 人々を魅了する錚々たる才能が結集した、 主人公・今野を演じるのは、『そこのみにて光輝く』『怒り』『日本で一番悪い奴ら』などで数々の映画賞に輝き、映画・ドラマ・音楽と様々な分野で躍進し続ける俳優・綾野剛。大切な人を失った喪失を前に再生の光を必死に手繰り寄せる男を演じ、新たな顔を見せている。見知らぬ土地に来た今野に親身になりながらも突然姿を消す謎の多い男・日浅には、15歳で『御法度』で鮮烈デビューを飾り、以後、エンタテインメント作品から作家性の高い作品まで話題作に出演、強烈な印象を残し続ける俳優・松田龍平。善人にも悪人にもとれる日浅を、妖しさともの哀しさが表裏一体となった雰囲気をまとい演じている。また、國村隼、筒井真理子、中村倫也、永島暎子、安田顕など、日本を代表する実力派キャストが脇を固め、“影裏”を抱える人間たちを印象深く表現している。 スタッフ陣も錚々たるメンバーが集結。脚本に『愛がなんだ』の大ヒットで注目を浴びる、澤井香織。音楽にNHK連続テレビ小説「あまちゃん」をはじめ数々のドラマ・映画・CMで新たな世界を奏で続ける音楽家・大友良英。撮影には、黒沢清監督作品をはじめ、多くの監督から信頼を受ける芦澤明子が手がけ、荘厳でありながら温かみのある盛岡の風景の美しさの中で繰り広げられる、人の影と裏をめぐる物語を映しとることに成功した。 失踪した親友の足跡を追い人生の影に在る真実に迫る中で、自身に思いを巡らすヒューマンミステリー「影裏」。日本映画界を牽引するキャストスタッフの魂が、この冬、日本を席捲する。 |
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STORY
親友が突然、姿を消した。 今野秋一(綾野剛)は、会社の転勤をきっかけにすべてを捨てるように移り住んだ岩手・盛岡で、同い年の同僚・日浅典博(松田龍平)と出会う。日浅は大学入学時に上京し、卒業と同時に生まれ故郷に戻り、今は父親と二人で暮らしているという。慣れない地でただ一人、日浅に心を許していく今野。二人で酒を酌み交わし、二人で釣りをし、たわいもないことで笑う…。まるで遅れてやってきたかのような成熟した青春の日々に、今野は言いようのない心地よさを感じていた。しかし、翌年の冬、日浅は突然、今野に一言も告げずに会社を辞めてしまう。今野は急な別れにショックを隠せずにいた。 その年の夏。今野の部屋へふいに日浅が訪ねてくる。見慣れぬスーツ姿で髪も整えた日浅は、なにごともなかったように一枚の名刺を差し出した。互助会の訪問型営業をしているという日浅は、自身の仕事の事を楽しそうに話した。その日をきっかけに、日浅はまた今野の前に頻繁に姿を現すようになり、以前と同じように心地よい時間が過ぎていった。 ある日、夜釣りに出かけた二人は些細なことで雰囲気が悪くなり、日浅は今野の服装や車の停め方などについて文句をつけ始める。流木の焚火に照らされた日浅は、「知った気になるなよ。お前が見ているのは、ほんの一瞬、光があたった所だけってことだ。人を見る時はな、その裏側、影の一番濃い所を見るんだよ」と今野を見つめたまま言う。急な態度の変化に戸惑う今野は、朝まで飲もうと言う日浅の誘いを断り帰宅。しかしそれが、今野が日浅と会った最後の日となるのだった—。 数か月後、今野は会社帰りに同僚の西山(筒井真理子)に突然呼び止められる。西山は、日浅が行方不明になっていること、また、もしかしたら死んでしまったかもしれないと話し始める。そして、自分が互助会に何口か入り、さらに金を貸してもいることを今野に告げる。日浅の足跡を辿りはじめた今野は、日浅の父親・征吾(國村隼)に会い「捜索願を出すべき」と進言するも、「息子とは縁を切った。捜索願は出さない」と素っ気なく返される。さらに日浅の兄・馨(安田顕)からは「あんな奴、どこでも生きていける」と突き放されてしまう。そして見えてきたのは、これまで自分が見てきた彼とは全く違う顔だった。 陽の光の下、ともに時を過ごしたあの男の“本当”はどこにあるのか—。 |
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CAST & STAFF
出演:綾野剛 筒井真理子 中村倫也 平埜生成 / 國村隼 / 永島暎子 安田顕 松田龍平 |
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心震わす感動のヒューマンミステリーの傑作 |
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『影裏』 |