INTRODUCTION
『リンダ リンダ リンダ』の山下敦弘監督が、 『リンダ リンダ リンダ』『苦役列車』『もらとりあむタマ子』など、オリジナリティ溢れる青春を描くことに定評のある山下敦弘監督が、今回初めて大阪を舞台に、音楽をふんだんに使った人間ドラマを描く。山下監督のもと、才能を爆発させ圧倒的な魅力を放つのは、渋谷すばる。俳優として高く評価されながらも、〈歌い手〉であることにこだわり続けてきた彼は、本作で「歌しか記憶がない男」というキャラクターと出会い、満を持して主演に挑む。共演するのは、『ヒミズ』『私の男』などの出演作で国内外問わず高い評価を受け、弱冠二十歳にして日本映画界に欠かせない女優となった二階堂ふみ。渋谷演じる記憶喪失の男を拾って‘ポチ男’と名付け、自分の家に住まわせる逞しくも一風変わったヒロイン・カスミ役を演じ、唯一無二の存在感を放つ。脇を固めるのは、大阪や音楽に縁の深い赤犬や鈴木紗理奈、さらに天竺鼠の川原克己など、バラエティに富んだ面々。観る者、聴く者の心を掴んで離さない、新たなる化学反応エンタテインメントがここに誕生した! |
STORY
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歌以外、全部忘れた男を拾って、 そして共に過ごす日々は、 ある日から止まったままだった彼女の時間を動かしていく―。 大阪。バンド【赤犬】のライブが行われていた公園に、ふらふらと傷だらけの男(渋谷すばる)が現れた。男はいきなりマイクを奪うと、「あの頃は~」と『古い日記』を歌い出す。その魂からほとばしるような圧巻の歌声に、シンと静まりかえる会場。「誰?!」。その歌声は一瞬にして【赤犬】マネージャー・カスミ(二階堂ふみ)の心を奪った。歌い終わった途端、男は気を失ってしまう。カスミの友人の医師・マキコ(鈴木紗理奈)の診断によると、男はどうやら記憶喪失らしい。捨てておけなくなったカスミは、認知症のオジイと暮らす自宅兼スタジオに住まわせ、彼を“ポチ男”と名づける。オジイの世話やスタジオの仕事をまめにこなす、無口だが心優しいポチ男の姿は、父親を交通事故で亡くして以来、かたくなに生きてきたカスミの心を少しずつほぐしていった。 ある日のこと、初めて耳にした曲を無意識のまま口ずさむのを見て、カスミはあらためてポチ男の才能を確信する。その夜、ライブの打合せに遅れてやって来た【赤犬】ボーカルのタカアキは、交通事故で全治二ヵ月の松葉杖姿だった。騒然とするメンバーの前で、カスミは「歌え、ポチ男」と命令する。その実力に半信半疑の赤犬メンバーだったが、カラオケでカスミが入れた曲を無心に歌い続けるポチ男の歌声にそれぞれ心動かされ、「オレ、新曲作ってくる」、「さぁて、練習するか」と1人また1人と立ち上がり、スタジオを後にしていく。最後には「ありがとう」と声をかけられるポチ男。それは、【赤犬】の新しいボーカル誕生の瞬間だった。 ライブデビューの日、ポチ男が歌った新曲『ココロオドレバ』に観客は熱狂した。次にポチ男と【赤犬】の出会いの曲となった『古い日記』を歌おうとして、ポチ男はステージ上で硬直する。耳元で誰か男の歌声が響き、カセットテープが回る映像がフラッシュバックしたのだ。その様子を見たカスミはポチ男の記憶が戻りつつあることを感じて、複雑な気持ちになる。そんな中、ウラなんばの聖地“味園ユニバース”での【赤犬】のワンマンライブが決まる。「それ、俺も…?」と問いかけるポチ男に、カスミは「しょーもないこと聞くな!」と言い放つ。 ライブに向けて準備に奔走していたある時、ポチ男は作業着を着たホームレスの男を見て無我夢中で後を追いかける。血だらけの作業着はポチ男が着ていたものだった。カスミは作業着にあった社名から工場を訪ね、ポチ男の実家を突き止めて、その過去を知ることになる。一方、ポチ男も自分の過去の過ちをおぼろげながら思い出し始めていた。「オレは危ないと思う」。ゆれ動きながらも心の距離を縮めていくポチ男とカスミ。二人はそれぞれの過去を乗り越えることができるのか。そして、“味園ユニバース”に魂の歌声は響くのか。 |
CAST & STAFF
監督:山下敦弘『リンダ リンダ リンダ』『苦役列車』 |
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『味園ユニバース』 |