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世界各地から招かれる国際的セラピスト 奥田健次独占インタビュー【前編】
世界各地から招かれる国際的セラピスト 奥田健次独占インタビュー【前編】
奥田健次(行動分析学者)Xアマゾン
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「あさイチ」出演後の感想

パートタイム教授、奥田健次です( ´ ▽ ` )ノ

行動分析学者で、心理臨床を専門にやってます。大学はスパッと辞めて、西軽井沢で廃校を買い取って学校づくりをやってます。

昨日のNHK「あさイチ」、VTR出演させていただきました。生放送だし、自分のロケの部分がどこをどう編集されて、どこを使うのか知りませんでした。

番組全体としては、悪いニュアンスでいうところの情報番組にしては、行動分析学の肝(きも)みたいなところがしっかりと伝えることが出来ていたように思います。全体として60点くらい。

おれのロケのVTRの扱いについては30点くらい。島宗先生のご活躍が100点で、全体の点数を引き上げています。残念だったのは、出演者の一人が「別にいいじゃん放っておけば!かわいいじゃない!」などのようなコメントを連発するので、せっかく島宗先生が一段ずつ階段を上げてくれているのに振り出しに引きずり戻すことになっていた点。

ご本人、悪気は無さそうなのですが、当事者に対して「かわいいから気にするな」「友達に指摘されたら直るよ」「女の子が好きになったら直るって」みたいに安直な励ましをすると、かえって当事者に疎外感を与えることになるという、自閉症児の親もしばしば経験するよくあるパターン。

対象となった親も、ずっと周囲からそんなふうに励まされてきたけど直らなくて今があるのに。

1回目のロケのときに、親御さんも言ってましたよ。スクールカウンセラーにも「そのうち良くなるでしょうから見守って」と言われて、何も教えてもらえなかったと。子育てに詳しいという人に聞いたら「指にわさびやカラシを塗って」とか言われたこともあるらしく、それも試してダメだったと。他にも全部いろいろ試したけど、どれも効果が無かったと。現在、小学校高学年になっても、まだ続いてるわけじゃないですか。

授業参観日に、クラスメイトや保護者らの前で、ずっと鼻ほじりをやっていたそうです。家では食事中に、鼻の穴にお箸の太いほうを突っ込んで口に入れたり、もみ手をして音を鳴らしたり。これは初めてお会いしたときに「指しゃぶり以外にもこんなのがたくさんあって困る」とのことでした。初めてお会いした1回目のロケのとき、録画されていたVTRでもそれらのひどさをご両親やスタッフと一緒に確認することができました。

なのにNHK。まるで指しゃぶりが減ったら鼻ほじりや手もみが始まったかのような構成でVTRを流していましたね。それは事実と異なります。実際のところは、「指しゃぶりが減った! 他の残っている癖も減らしたい!」という親の願望があって、行動というのは相対的なものですから、あたかも他の癖が増えたかのように感じただけのことです。こういうことは、あのように長期的な問題を抱えている家庭(や学校)では、よくあることです。

「増えた」という気がするばかりで、そもそも記録を取ってないでしょう? 記録を取るという手間を省いて、目先のことで一喜一憂するから、問題が多様化し長期化するのです。

行動分析学やおれの今回の介入が「もぐらたたき」ではありませんからね。それはNHKが恣意的にやっちまった構成です。カメラが回っている前で、親御さんの前で、これまでこの家族がやってきた「もぐらたたき」の話をしたのです。これまで家族がやってきた「もぐらたたき」を止めようね、「もぐら逃がし」をやろうねと、図に書いて丁寧に説明したわけです。ロケ中、ご両親もスタッフも「なるほど」と納得の嵐でした(ディレクターの言葉です)。

他にも、発達上や学習上の遅れの問題、まだ母親が隣にいないと寝ることができないという問題、暴力も含めた衝動的な行動の数々。専門機関を受診しなければならないということをです。初回のロケのときにお伝えしました。周囲が「かわいい、大丈夫よ」などと無責任なことを言い続けた結果です。

そもそも、打ち合わせの段階で対象児の問題を聞いたとき、「小学校高学年で指しゃぶり? そりゃ絶対に問題はそれ以外にも山ほどあると思いますよ。例えば親から離れられないとか暴力とか、金銭管理とか・・・」などと、おれはロケバスの中で対象児に会う前にディレクターに言っていました。山ほど直してきたケースなので、おれに直してもらった親御さんは皆、今や自覚していると思います。

情報番組への「お悩み相談」くらいの問い合わせで済ませるレベルじゃないということ。

島宗先生も番組で「小児科などで『習慣逆転法』で直してくれませんかと受診すればよい」と言って下さいました。おれもこの記事より前の記事で、同じことを言っているでしょう? もちろん、まだまだ「習慣逆転法? ナニソレ?」という病院のほうが多いと思います。しかし、小児科医はすぐに調べるでしょう。臨床医なら、効き目のある方法を取り入れたいからです。効果が認められている技術が広まるためには、視聴者(消費者市民)のみなさんが賢くなってオーダーすることが一番手っ取り早いのです。

島宗先生が習慣逆転法を分かりやすく「3点セット」として紹介してくれました。「意識化」「拮抗行動」「動機づけ」。これらは確かに三本柱です。臨床的には、この柱を立たせるために他のステップを追加する場合がほとんどです。でも、やはりこの三本柱は必要不可欠です。

おれ、これをたった2回しかないロケで全部やったの、分かります? 1回目は初顔合わせですよ、家の中に何があるのかも分からない。

こんな感じでした。

【ステップ1】 意識化

何かええもんないかな〜? コップならそうか? 持ち歩きにくいからイマイチやな。そうや! 小学生やねんからリコーダーあるやろ。ということで、リコーダー。まずは指しゃぶりにのみ笛を吹く。指しゃぶりを見つけたら笛を吹くことで、家族の「叱り癖」「貶し癖」を直してしまうこともできる。まさに魔法の笛(笑)。パパゲーノ!

4日後、最後のロケ。ステップ1を実施したかどうかの確認。

【ステップ2】 代替行動分化強化もしくは非両立分化強化(タオルで口を押さえる)

指しゃぶりだけでなく、元々ひどく見られていた鼻くそほじり、鼻の穴にお箸を突っ込む、手もみ音ならしに拮抗する行動として、おしぼりやタオルで鼻の下と口周りを強めに自分で押さえる。セルフ口腔マッサージ。ご両親とお姉ちゃんに質問した。「『鼻くそをほじって食べるのとお箸を鼻の穴に突っ込むのを繰り返す行動』vs.『ちょっと神経質なオネエみたいに見えるけどタオルで何度も口周りをふくような行動』。どっちのほうが受け入れられる?」全員、後者を選んだ。

【ステップ3】 動機づけ(モデリング、シェイピング(子どものタオルふき行動を強化)、シェイピング(親の褒め行動を強化))

まず、見ててね。デモンストレーションを実施。対象児を褒めまくり。ご両親と交代。対象児、タオルで口周りをふく。瞬間、おれは褒めまくり。両親無言。「ほめて、ほめて!」。両親はぎこちない褒め。2試行目。対象児、タオルで口周りをふく。両親無言(苦笑)。「ほめて、ほめて!」。両親はぎこちない褒め。3試行目。対象児、タオルで口周りをふく。両親無言(苦笑)。リポーター中谷さんのほうが褒めるの早い。両親はぎこちない褒め。4試行目・・・お姉ちゃんも1回だけ練習・・・

予後は厳しいと思いますよ(親元から離れておれが預かれるのであれば直してみせようホトトギス)。これまでの経験上、叱りまくってきた家族が一朝にして変わるのは難しいという事実。しかし、ビフォーの叱られまくりで叩き叩かれ蹴り返される家族の関係が、アフターで約束通り大幅に変わったというのは見ての通りです。

それにしても、ここまでやっているのにNHKのVTR編集と構成はあんな感じ。だからVTRの使い方は良くて30点くらい。しかも、ところどころおれの声まで音声変えられてるやんか。雑な音声処理。おれはヘリウム吸ってないのに。おれはヘリウム、吸ってないのに〜(高音)。

島宗先生の100点のご活躍のおかげで、番組全体が及第点にまで引き上げられています。特に、親の叱り癖にアプローチしていることを明確に伝えて下さったのが良かった。親の盲点です。目の前の子どもの変な癖ばかり目について、自分にどういう対処癖があるのかなど考えたこともないはずです。こういうところに気づかせてくれるのが行動分析学の利点であり、行動分析学の醍醐味であると言えるでしょう。真逆の視点。おれにはピッタリです(^^)

杉山先生の細やかな記録についての提案。これも標準的な方法です。レコーディングダイエットみたいなもんで、ステップ1の意識化を中心としています。記録を取る手間はかかりますが、それがステップ2、ステップ3との繋がりを持つこともあります。

番組を見たおれのほうのスタッフからは「笛とか、ハンカチ王子式とか、アイデアがすばらしいです」と予想通りのご感想(^▽^;)

他のスタッフからは「たった4日間で2回だけのロケで、しかもあれくらい思春期に入り始めた子にここまでやってのけるとは」と。ま、そりゃそうだ。

無茶なオーダーをよく引き受けたものだと、我ながら度胸があるなと思いますね。

追記:島宗先生のブログに存分に詳しい解説が掲載されています。ここの読者のみなさま、まだ島宗先生の『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか 素朴な疑問から考える「行動の原因」』(光文社新書)をお読みでない方は、今後のために読んでおいて下さい。読み方のコツは、行動の流れ図が出てくるときに、ゆっくりと右脳を使って(笑)、その行動の流れを目に浮かべながらゆっくり考えることです。時間に遅れるのとか傘を置き忘れるのは「だらしないから」というありがちな考えを一掃してくれます。

奥田健次

※オフィシャルブログ管理者より

コメントをたくさんいただき、ありがとうございます。コメントについては、管理者のほうでチェックして公開-非公開としています。個人的な内容や馴れ馴れ しいコメントについては、管理者の判断で非公開にしています。公開されるコメントについては、奥田健次先生にもすべて目を通していただいております。コメ ントへの返信はしない方針で運営してきましたが、これからもその方針に変更はございません。これらのことをどうぞご了承下さいませ。

なお、奥田先生へのお問い合わせが殺到しています。これまでの記事をお読みいただかずに相談のお申し 込みをされる方もたくさんおられます。同じ方からの頻繁なお問い合わせには、余計に応じにくくなります。以前の番組出演のときの注意事項がありますので、 こちらの記事等をど うかよくお読み下さいませ(NNNドキュメント放送後のお問い合わせについて)。

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コメント (17件)

  1.  鼻くそと戦う4歳児母かつ医師です。
     そんな素敵な番組だったんですね。ムスコが発熱し、夫ともその朝喧嘩してしまって、録画できませんでした。無念。
     でも、このブログを見ることによって、うちの鼻くそ問題(ムスメ)にも光明があるかも?という気になってきました。
     私は褒めまくってるし、叱らない(恩著をよんでりゃ当然)んですが、夫が叱り癖をやめられないんですよ。思い余って本を渡したけど、よみゃしないし。本人もはなくそほじり+食べ癖あるし。
     改良点としては、ティッシュを渡していたけど、ちびタオルがイイかもですね。
     指しゃぶりも以前あったんですが、私のおかげ?で治りました。
     ほんと、一つ癖のある人は、他にも癖を作りやすいですね。それが、以前からあったことが編集でつたわらず以前はなかったかのように見えてしまうとしたら、メディアはおそろしいです。学会発表なら既往症や併存症でぱきっと時系列が示せるのに。
     無神経?コメントに対する皆さんのレスも、そうよ、体験者、当事者はそう思うよね、と、うなずきました。
     このブログを訪れてよかった。
     また今日も鼻くそと地道にたたかうぞ!

  2. 奥田先生

    NHKあさイチ拝見しました!

    まず、島宗先生のコメントが素晴らしかったですね。
    登場が「爪噛みと愛情不足は関係ない」という旨のコメントがインパクト大でした。
    3点セットの説明は専門家の中でも気づいていない人が多いでしょうし、「小児科へ行け」という内容も痛快でした。

    一方でそのような島宗先生に対して、いちいちRIKACOが自分の娘への成功体験を繰り返すのが非常に腹立たしかったです。
    先生のブログに書かれていたのは誰がどう見てもRIKACOのことだと思いますが、正直なところあれが「困っていない一般人の」意見かなと感じました。
    それにしてもしつこかったですね。
    先生はブログで「悪意はない・・・」と書かれていましたが、悪意も感じられる発言でしたよ。。

    それから、先生のロケについてですが、正直なところ「NHKの無茶ぶりだな」と思いました。
    あの家庭状況や、顔は隠してあるけれども明らかに発達の遅れが疑われる子の家庭への介入は無理があることは「臨床に携わっている人」ならすぐにわかります(私なら受けないでしょうねぇ)。
    多分、大部分の視聴者には伝わっていないと思いますが、あのようなオファーを受けられる専門家は先生以外にいないと思います。

    その中での「変化」やリコーダーの提案、家族のしかり癖への介入など、私としては見どころ満載のVTRでした。ありがとうございました。

    内容からはそれますが、個人的には島宗先生が出演依頼に応じられたことも驚きでした。
    島宗先生のブログでは、メディアや講演会関係の依頼は全て断っているとあった(と記憶しています)のですが…単純に嬉しいです!

    メディアに出るほど誤解されたままの批判も増えますが、でも行動分析学という役に立つ学問があることが少しでも広まるといいですね。

  3. あの一人のコメンテーターさんこそ、この特集一番マストやん(笑)

  4. 管理人さま。
    昨日は、番組に対して批判しまくりの、あんなコメントを承認していただきありがとうございましたm(_ _)m


    奥田先生、こんばんは(*^_^*)

    遠慮して書かないとお伝えした部分については、先生が今日のブログで書いて下さったので、大きくうなずきながら読みました。

    ですので、今日は大人しくいきたいと思います(笑)

    先生の発想は本当に素晴らしいですね。

    「ちょっと神経質なオネエ」の箇所で思いっきり吹き出してしまいました(笑)
    真面目な相談の依頼なのに、笑うなんてごめんなさい。
    でも、こんなの、奥田先生にしか出来ないんだろうなぁって、先生のスゴさを改めて感じたんです!

    「子育てプリンシプル」も読み終わりました(*^_^*)
    集中して一気に読めてしまいました。
    とても読みやすかったです。

    本の中に出てくる例えもオリジナリティに溢れていて
    親しみやすくてわかりやすい!!
    もも組さん…
    土台家族…
    本当にその通りですね。

    そして、先生の書かれている事は私の心の中にスーッと染み渡っていきました。
    何だか、母である私が先生の本に育てられたみたいに思いますo(^_^)o

    大学生の頃、「楽譜は財産なのよ」とピアノの先生に言われた事があります。

    先生の書かれた本もとても大切です。
    私の財産です。
    これからも一冊ずつ丁寧に読んでいきたいと思っています。

    それから、インタビュー記事にあった、国立成育医療研究センターですが、私の家の近くなんですよ(*^_^*)
    息子がお世話になっています。

    この病院の先生方が素晴らしいのは知っていましたが
    そんな「スーパードクター」から「スーパードクター」と思われている奥田先生はやっぱりスゴイ!!

    インタビューの後編掲載も楽しみにしていますね(*^_^*)

  5. 先生こんばんは。
    あさイチ拝見させて頂きました。
    素直に笑い飛ばしてたスタジオの方に
    貴女の子供なら、どうしますか?
    事は深刻です。
    対象児を見て思いました。
    私の姪も小学校3年までオネショが治らず
    オムツを着けて寝ていました。
    背後に隠された姪の問題。
    専門機関の受診。
    今はオネショは治り、春から中学生です。
    でも、問題点はまだまだあります。
    先生の本を知恵にしようと、何回も読んで自分のものになるように。
    先生の番組を妹と姉とまた一緒にみたい
    と思います。
    先生、応援しています。
    これからも頑張って下さい。
    ヘリウム吸ってないのに~には
    かなりウケました。(笑)

  6. 奥田先生、
    先生のグログを読んで、気持ちが晴れました。
    情報番組だから、明日はまたテーマが変わって、昨日の事は忘れ去られるのだから…では、ありません。
    録画して、何度も見て、もっと何かを学びたいとしている者がここにもおります。
    かつて、受け持った子ども達が浮かんできました。その時に先生に出会っていれば…
    いくつになっても謙虚に聞く姿勢、学ぶ姿勢を持っておこうと思います。
    島宗先生、奥田先生、優しさに溢れて素敵です^^

  7. あさイチ、お勉強になりました。
    が、
    奥田先生!
    生出演させてはいけなかったのは、奥田先生じゃなく(笑…ほんの冗談です)、あの女性コメンテーターだと思いました〜。
    奥田先生と島宗先生と、とてもわかりやすくお話いただいたのに、内容を理解できてないまま勝手な考えを言っていて、なんだかガッカリでした…

    が、クセ。
    クセも行動からなのだと、わかりましたo(^-^)o
    早速娘に応用してみます!


    奥田先生、もっとテレビなどで色々教えて下さい。
    (^O^)

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奥田健次(行動分析学者)プロフィール

プロフィール写真


奥田健次(おくだけんじ)
身長・体重 174cm・63㎏
生年月日 1972年1月20日
血液型 B型
出身地 兵庫県

プロフィール詳細

このブログの更新情報が届きます。

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http://www.diamondblog.jp/kenjiokuda/

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